一昨日5月8日、平穏に過ごしていた我が家にとってショッキングな夜となった。主人と子供達は、その前日の夜中に開催されたマイアミでのF1をモニターで観戦していた。私は、9時頃には、電子機器を持ち込まず、ベッドで眠くなるまで本を読むのが習慣で、ベッドへ行こうとしていたけれど、家族が団欒していたので、少し参加して、寝室に行く手前で、2年前に引き取った20歳になる老猫の可愛さに思わず猫の横でゴロンとなって猫を撫でていた。
“??”何かいつもと違う危険な匂い、何かが焦げるような匂い、がしていることを脳が一瞬警戒したけれど、ここは“ど田舎”。“きっと誰かが焚き火か何かしているのだろう”、と思い込んだ。そう、“思い込む”とは恐ろしいこと。夜の9時に焚き火をするわけがなく、一瞬“警戒”した“脳”の警報に敏感にならなきゃいけなかったのだ。しかし、その数秒後今度は長男と主人が「何か匂う。」「何か燃えてる匂いがする!」と言い出し、私と主人と長男が匂いの原因を追求するために外に出た。すると外は一面煙が蔓延していた。
人間の“思い込み”とはなんと恐ろしいのだろう。私と主人は、斜め前の家の人が、以前落ち葉を拾い集めて庭で燃やしてあり、煙が風で我が家に流れていてとても迷惑したので、その事を伝えに行くと、「違法じゃないでしょ、」って言われて、仕方なく警察に仲裁に入ってもらった。警察が「違法です、」と伝えると今度はその人、家の中にあるペチカを使って燃やしたから、「違法じゃないでしょう」と言っていた。警察もさすがに、「ペチカは何も言えないですから、」と私たちに伝えてくれ、そんなことが数ヶ月前にあったもんだから、私と主人は“きっとあの人がまたペチカで落ち葉を燃やしているんだろう”と考えたわけ。なので、庭から飛び出した3人だけど、私と主人は家の前の方へと小走り。しかし、長男はそんなバイアスがかかっていなかったのか、素直に煙の流れてくる方向へ向かっていた。主人も私もすぐに“こっちじゃない”と気づき、今度は家の裏へ回った。その時には三男も出てきていて、自分達が見ているもの、つまり煙の量は“尋常じゃない”と気づき始めていた。“何かおかしい”。”火事に違いない、と”信号が脳に伝わったものの、火事なんてそんな頻繁に見るわけもなく、またまた私たち4人の”脳”は、“きっと遠くで火事だ”と判断していた。その時三男に、「体勢を低くした方がいい、」と言われて体勢を低くしながら煙の原因を探していると、少し先まで行っていた主人が裏の家の窓からモクモクと大量の煙が出ていることに気がつき、やっと私たち4人は“ただごとじゃない”と悟った。
裏の家は、人が住んでいるのかいないのかよく分からない家だったので、火事の瞬間人がいるとは思わなかったので、人的被害はないと思っていた。主人はすぐに「911に電話して!」と叫び、次男が電話。その電話を主人がバトンリレーのように受け取ると「隣が家事です!」と電話で住所や情報を伝えていた。私は、以前『バッグドラフト』という映画を見ていたので、煙から突然いろんなものが爆発すると思い描き、とにかく家事の家から反対側に行くように子供達に指示。子供達と言っても27歳、24歳、22歳の立派な青年達。三男が「こっちから(外に)出よう」と、火事の家から反対側になる窓から出るようにそくしてくれ、次男と三男はすぐに庭から外へ出て避難。私は何かあって持ち出す時間があれば“これだけは持ち出す”と決めていたこのパソコンと充電器を持って外へ避難。
しかし、そこに主人と長男がいない。慌てて次男と三男に、二人の居場所を聞くと、モクモクと夜空に煙が上がっている家のお隣へ火事を知らせに行った、という。私は、この煙は絶対にすぐに大火事に発展すると思ったのですぐに主人と長男を探し、長男が見えたから、「早くこっちに来て!パパは?」と叫んだ。主人は、電話で消防の方に言われた通りに、避難する前に火事のお隣の家へ、家の塀をまたいで向かいってゆき火事を知らせに行っていたのだ。戻ってきた主人に「こっちに来て!すぐに大変なことになるから!」と言うと、主人が一旦こちらへ来たけれど、「車の鍵を持ってくるから、待ってて。」と行って再度家の中へ入っていった。
この出来事は、そこ何分だろう、みんなが迅速で適切な動きをしたからものの数分だったと思うけれど、今度は火事の家からパリン!パリン!とガラスが割れる音がし始めたかと思うと、ペチカの中でまるで家ごと燃やしているような炎が上がり始めた。
駐車場で、主人が家から出てくるのを永遠に感じながら待っていながら夜空に舞い上がる大きな炎を見ていると“恐怖”を感じずにはいられなかった。ようやく玄関から主人が出てきて全員が車に乗り込むと、エンジンをかけた主人が「忘れ物ないよね、」と多分“第六感”的に言葉にした。私の脳裏に、さっきまで撫でていた老猫のことが浮かぶと、猫の名前を叫んだ。主人がすぐにまた車を出て、燃えている家に近い玄関から出入りするのを見て、三男に「パパに玄関じゃなく、庭側から出るように言って。」と言うと三男がすぐに知らせにゆき、「パパは猫を抱っこするのが上手くないから」というと、猫が一番なついている長男が車から出ていった。全員+猫が車に乗ると私たちは即避難した。
主人の実家へ向かっている途中で消防車とすれ違い、主人の実家で鎮火するまで待機。消防隊のお陰で火は1時間ほどで消え、我が家も火事のお隣の家も被害はなく、家に帰ると皆の無事を感謝しながら“火事”の恐ろしさについて、そんな恐ろしい“火事”に立ち向かっている“消防隊”の方々の“勇気”について語り合い、称賛し、尊敬の念を抱いた。
その日は100人を超える消防隊や警察の人たちが家の周りに来ていた。原因は85歳の方の“タバコの不始末”と言うことだそうだ。たった1本のタバコから、あんなに炎が燃え上がり、家が半壊するなんて、そしてまた、たまたま夜風が涼しく家中の窓を全部開けていたことでその日は100人を超える消防隊や警察の人たちが家の周りに来ていた。原因は85歳の方の“タバコの不始末”と言うことだそうだ。たまたま夜風が涼しく家中の窓を全部開けていたことで早めに異変に気がついたけれど、通常だったら夜は窓も全部占めていただろうし、発見はもっと随分後になっていたと思う。消防隊の方も「早めに通報して頂けて助かった。」とおっしゃってくださったけど、本当に”たまたま”運が良かった。
毎日焦げ臭い匂いが風に漂ってくるとどうしてもあの炎が脳裏によぎる。誰も亡くならず、隣近所にも火が移らず、不幸中の幸い。心から、“火”の怖さを体感することとなった夜だった。